中上健次『地の果て至上の時』

地の果て 至上の時 (講談社文芸文庫)

地の果て 至上の時 (講談社文芸文庫)

 なにも持たずに生まれ、むごいほどに奪い続け、かなしいほどに失い続けて、それでもまだ、魂は安らがない。何も持たずにはいられない。何もかもが変容してしまった故郷で、土と血だけがこびりつく。
 べっとりと、宿命のように。
 最後には失うしかない。行きつ戻りつ、決まりきった結末を迎えることさえできないのならば、誰かが死ぬしかない。そうするほかに、何もかもを脱ぎ捨てることはできない。
 終わりはいつだってそうなる。血が流れ、土地は焼ける。