中村航『星に願いを、月に祈りを』

星に願いを、月に祈りを

星に願いを、月に祈りを

 投げ捨てられた思いや言葉は物語は、どこにも行くことができない。取ってつけたような結末は彼らの命を担保しないし、ましてや回収などぜったいにしてくれない。それらは漂い、ただ惨めに泥にまみれていく。
 物語に指向性がなく、ものごとに方向性がなく、時の流れに変化がない。それらは決まりきった道をなぞりながら、決まっていた通りのゴールにたどり着く。意志はなく、魂を落着させてやるだけの器もない。
 かりそめの救いがあったとしても、これではあまりにも報われない。これではあまりにも、彼らが哀れではないか。