菜の花忌

 16年前の今日、司馬遼太郎が死んだ。
 著作を読みはじめたのは高校時代だから、亡くなってからずいぶんあとになる。あの年頃に司馬遼太郎の小説群に出会っていなかったら、これほど読書が日常に密着することはなかったかもしれない。そうなるとほとんど唯一の趣味を与えてもらったに等しい。十代の後半のほとんどの自由時間をその周辺に落としてきたのだから、大げさでなく人生を変えた小説家だった。
 今でも、著作は本棚のいちばんいい場所に並べてある。年に一度はなにかの作品をあらためて読む。そのたびに、まだちゃんと感動する。社会にとってはもちろん、個人にとってもあまりに大きな人だった。
 今日は『21世紀に生きる君たちへ』をゆっくりと読み返してから寝ようと思う。