鹿島田真希『その暁のぬるさ』

その暁のぬるさ

その暁のぬるさ

 失ってから輪郭を取り戻すものは、世の中にありふれている。影で重なっていたものが、ふいに離れていった後の、おのれの姿の貧弱さにおののくことは誰にでもあることだ。その一方で、ただひとりはっきりと周囲をわかつ輪郭の黒々とした佇まいに、美しさもやはり宿る。
 混じり合いながら、畢竟、そこに自分はあり続ける。あり続けるしかない。それが他ならぬ喜びであることを、疑ってはならない。